講義録
前半は「光と影」をテーマとした店舗を中心に、後半は様々な素材を用いた店舗をスライドを交えながら先生のデザインリソースをご説明いただきました。受講生からの活発な質問を受けながら、和気藹々とした講義になりました。
以下は講義で使用されたスライドからの抜粋と受講生との質疑応答をまとめたものです。
 
野井 成正先生
1995年 世界インテリアデザイン会議(IFI'95NAGOYA)講演『21世紀、デザインの視点』
1996年 JCD((社)日本商環境設計家協会 主催:OSAKA関西支部)講演『くらしの中のインテリアデザイン』
1997年 名古屋D.D.D.ショー(主催:(株)国際デザインセンター、JCD関東、中部支部)講演『建材再考フォーラム』
2000年 大阪万博記念公園内「迎賓館」大改築事業計画〔総合デザイン及び設計〕
1993年 JCD[日本商環境]デザイン賞大賞受賞「BAR 川名」(大阪市)
1998年 JCD[日本商環境]デザイン賞優秀賞受賞「香の店 リスンII」(京都市)「魚真」(東京都)
http://www.noi-shigemasa.com/index.shtml
■前半:「光と影」について
木材を利用。光の当て方を工夫すれば、見る角度によって表情が全く違います。

Q. 先生の作品は、光によって表現している空間が多いようですが、色彩を用いた表現はないのですか。
A. 私の場合、光を見せる方が好みです。光をあてることによって出てくる色を大切にしたいと考えています。
Q. 照明器具を使ったデザインばかりですが、自然の光で空間を表現することはないのですか。
A. 太陽光は好きなので、住宅の設計をする場合は重要視しています。最近依頼のある店は、BARやレストランなど自然光のない場所が多いので、照明器具を用いてのデザインになってしまいます。
Q. 空間演出にはどのような照明器具をよく利用するのですか。
A. 間接照明を用いて空間を演出する場合が多いのですが、それに向く照明器具は今のところあまり無いですね。
オーナーの好みによって変わりますが、最近では柔らかい雰囲気を出すために電球色の蛍光灯を使用したりします。
間接照明に適する白熱灯などがもっと増えてほしいと思っています。
Q. 店舗のデザインをする時、マーケティングについても考えているのですか。
A. 事前に店の目的や客層を考えます。しかし、必ずしもそれに見あったものになるとは限りません。
そのお店に入りやすいかどうかは、そのお店にある「しかけ」に左右されます。私がデザインする店は、客がその店に入る前に「期待感と不安感」を持たせるようにしています。入る時にある程度の「覚悟」が必要になると、後々まで印象に残っているものです。その辺の心理をつくのが重要です。
また、過去にディスコの設計に携った際、アプローチを長い一方通行にして話題になった事があります。それは、ホールにたどり着くまでの長い道のりで音楽を体感し、踊りたくなる「しかけ」を作ったからです。
このように、ありきたりのコーディネートではなく、工夫を凝らす=「しかけ」を重要視しています
■後半:様々な素材による演出について
素材に布を用いた店舗。この他、和紙を用いたものやステンレス・アルミを用いてデザインした店舗を多数紹介。

Q. ステンレスやアルミを素材に使う場合と、布や紙を素材に使う場合との違いはあるのですか。
A. ステンレスやアルミを使う場合には、“反射する美しさ”を重要視しています。綺麗だけどシャープな印象になります。シルエットやラインによって表情もすごく変わるので、強烈な印象を与えたい時などに使いる事が多いです。
逆に柔らかい、包み込まれるような雰囲気を出したい時は布や紙(和紙)を用います。例えば、障子から太陽の光が入ったりすると、柔らかい感じできれいですよね。同じ目的で、木材を使用する事もあります。
Q. 最近ではアクリル素材を使っているところも多いですが、先生も使われていますか。
A. 私はアクリルよりも自然の素材を用いる方が多いです。天然のものは時間が経つと変化する良さがあり、いろいろな表情を見せてくれる。アクリル素材などを使用する時は、全体ではなく椅子やカウンターに用いる事が多いです。
Q. 鉄を素材に用いているところもありますが、サビ対策などもしているのですか。
A. サビ止め効果のある塗料を塗っています。サビ止め塗料も種類が多く、透明でテカらないものも出ています。
また、サビを生かして雰囲気を出し、デザインの一部としているお店もあります。
Q. サニタリー部分もデザインしているのですか。
A. サニタリー部分も設計の一部です。オーナーから特に指定のない場合は、コンパクトで清潔感のある空間にするように心掛けています。
お店の雰囲気と統一させるというよりも、逆に雰囲気を変えてインパクトを与える空間にしています
野井成正先生より一言
皆さんにお願いしたい事は、映画を沢山見て欲しいという事です。映画の中にはデザインを考える上で、多くのヒントが隠されています。良い監督・良いスタッフ・良い映像のものを見つけ出して参考にしてみてください。
それと、移動の際は歩く、もしくは自転車を利用してください。自動車に乗るよりもいろいろな物が身近に感じられます。風・匂い・色…それらにある“小さな発見”が思わぬヒントになる事が多いものです。

受講生の声 アンケートより抜粋
先生の素材や光、またそこに生まれる空間に自身特有の色を出し、こだわりを感じる事が出来ました。スライドと熱意ある講義は、大学の授業の何倍も役に立ちました。(22才・男性・芸大生)
BARやレストランのデザインには興味があり、お店に入るたびチェックしていましたが、デザインにはそれぞれストーリーがあり、映画や普段の散歩の中にも空間デザインのヒントは多くある事を改めて感じました。
(28才・女性・OL)
木材が時間の経過と共に反ってくるのを表情の面白さとして利用されているのが印象的でした。他にも和紙や木の皮、サビまでデザイナーがデザインしきれない、素材の持つ自然の力をデザインの中に取り込む、という手法に驚かされました。(35才・女性・OL)
飲食店では入店時に「期待感と不安感」を持たせるために、遊び心と仕掛けを組み込んでいるというのが特に心に残りました。主観性と客観性の両面を持ち合わす大切さ、生活からデザインのヒントを得ることもわかりました。1回の講義だけでは残念です。もっとお話を伺いたかったです。(30才・女性・ハウスメーカー勤務)

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