講義録
前半は店舗がオープンするまでの簡単な流れを、後半は実際に近々オープンが決まった物件をもとに、ディスカッションを交えながら店舗デザインについてお話していただきました。
<講師より>
店が流行るかどうかは誰にも予測できないことですので、一概に「こうだ」というお話はできませんが、本日はオーナーシェフという立場から、店舗という空間のデザインをどのように考え、期待しているかをお話ししたいと思います。
 
和田 信平先生  
あべの辻調理専門学校、辻調理フランス校、フランス・東京での修行を経て独立。昭和61年レストラン「シェ・ワダ」を大阪にオープン。昨年御堂筋に、複合レストラン「C シェ・ワダ」のオーナーシェフとしてオープン。南船場にアジアンダイニング「C.D.D」をオープン。
前半:店舗オープンまでの流れ
 授業風景

場所の決定
店を作る場合、最初にどのような店にしたいか条件を明確にします。それに合わせて情報を集め、多いときで200近い物件を見に行きます。実際に足を運んでみると「流行るにおい」のする物件というのが見つかります。これは、<第六感>に頼るしかないですね。逆にいくら家賃や立地条件が良くても「流行るにおい」のしない物件には店を出したいとは思いません。
プレゼンテーション
つい先日出店の決まった三休橋筋にある「大中証券ビル」は、非常に魅力的な物件だったため某有名ブランドをはじめ、多くの出店希望者(企業)が来ていました。最終的には、私の店が出店することになったのですが、私がどのようにして錚々たる候補者の中から選ばれたのか、そのポイントをお話いたします。
私がプレゼンテーションをする時は、常に建物の持ち主が「何をすれば喜ぶか」ということを第一に考えるようにしています。今回の「大中証券ビル」でしたら、東京駅を建てた「辰野・片岡建築事務所」が造った赤レンガのきれいな建物です。ビルのオーナー側としては、その建物を活かしたいと思っているはず。料理に関しては譲れませんが、建物についてや周辺店舗との関わりについては、できる限り相手の意向を汲むように考えています。
業者・デザイナーとの関わり
出店が決まったら、いよいよ「デザイナー」の出番です。店のオーナーが何のためにデザイナーに依頼をするかというと、もやもやと考えているイメージを具体化してもらうのが一番の目的です。そのイメージを膨らませるために、常に流行っているお店へ足を運んだり、海外の雑誌などでアンテナを広げるようにしています。
いくら新進気鋭のデザイナーでも、モラルと採算を無視した考え方はオーナーとして困ります。経営者は1日の売上を上げるために客単価がいくらで座席数がどれだけ必要かという計算を常にしていますから。
場所の契約が決まると、その時点から家賃が発生するのがほとんどですので、オープンまでの期間はできる限り短くしたいのがオーナーの本音です。オープン前の立入り検査ですぐにOKをもらえるようにあらゆる基準を満たし、かつ納得のいくデザインをオーナー側は期待しています。
オープン後のフォローについて
店舗というのは、オープンしてからが勝負です。レストランですので、味のチェックやメニューの改善は言うまでもありませんが、店舗のチェックもまめにし、常に良い状態で経営できるように勤めています。
後半:ディスカッション(前述の「大中証券ビル」の写真及び平面図をもとにディスカッションを行いました)

和田先生: 私がこの店舗のデザインをあなたにお願いしたとしたら、中の壁はどんな感じにしますか?
受講生A: クリーム色のうろこ壁にして、間接照明で雰囲気を出したらどうでしょうか。
受講生B: 最近ではアクリル素材を使っているところも多いですが、先生も使われていますか。
和田先生: では、カーテンはどのようなものをつけますか?
受講生C: 私は、壁の色を淡い色にして、カーテンをローズピンクの女性らしい雰囲気にしたいと思います。
受講生D: オレンジ色。
受講生E: レトロな雰囲気にするため、エンジのカーテンにしてはどうですか。
受講生F: お店のテーマカラーを決め、カーテンの色をそれに合わせてみてはどうですか。
和田信平先生より一言
今回の授業でいろいろと皆さんに質問しましたが、「正しい答え」というのはわかりません。ただ、オーナー側が待っているのは「いかにも正しそうな答え」なのです。依頼する側に「なるほど、その通りにしたら成功しそうだな。」と思わせればよいのです。今のシュミレーションでしたら、「テーマカラー」というキーワードを持ち出されると、「いかにも正しそうな」気がするので、Fさんの意見を採用するかもしれません。
いかに自信をもって自分のコーディネートをアピールし、説得してくれるかが依頼側の求めていることです。もちろん、そのためには勉強をして説得できるだけの情報や知識をつけている事も大切です。
世間に出ている店舗で「新しいデザイン」というのはほとんどありません。流行しているお店のマネをしているのがほとんどです。大阪でも、海外で人気のある店のマネをしているのをよく見かけます。それをいかに形にし、認知されるかが長続きするポイントになると思います。

受講生の声 アンケートより抜粋
今回はオーナー側のお話だったので、違った見方から考えることができたのでとても興味深かった。(21才・女性・学生)
何事においても最後は「感」だとおっしゃっていましたが、その為の知識を身につけることが大切なのだと感じました。(28才・女性・医療関係)
シェフがエネルギッシュでとてもおもしろい講義でした。コンセプト作り+意気込みが大切なのだと実感しました。(24才・女性・主婦)
自分の引出しをどれだけ持っていて、それをアピールする力がどれだけ必要かがわかりました。自分自身に足りないものをたくさん発見した気がします。相手の気持ちをいかにつかむかが、これからの課題になりそうです。シュミレーション的授業楽しかったです。(24才・女性・出版関係)

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