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私は立ち止まらなかった。今進まないと、一生後悔しそうだったのだ。「あの時こうすればよかった」などと愚痴る、中年なんかになるのはまっぴらだ。可能性が見えているのに、自らそれを断つことなんてできない。そして、仕事で培われた実行力はこの酔狂なプロジェクトをどんどんと前へ進めてしまっていた。
- ポートフォリオ作成
- 提出書類(大学の卒業・成績証明書など)の準備および送付
- 紹介状の依頼
- 面接のスケジュールを学校の事務局と打ち合わせ
ポートフォリオと言っても、私の手許にあるのは大学の美術部の仲間達と年に一回定期的に行っていた美術展のための絵画や版画などが主で、これにSDコースの課題二点の模型を写真に撮って若干の説明を付け加えたものを加え、それからサマースクールでの作品を足した。どれも恐ろしいほどシロートなものだ(そもそも、ちゃんとしたデザインや美術の教育なんて、受けたことないのだ。)けれど無い袖は振れない訳で、それが私ですと言うしかない。でも、こんなにしょぼいもん持ってあの学校に乗り込む奴が居るのだろうか?
当然不安だ。
そして、私は応募書類にエイヤ〜と「三年次に編入希望」と書いた。別れ際にサマースクールの先生が「3年に応募するといいよ。それで入れたらとってもナ〜イス。2年でもいいけどね」と言った言葉を反芻した。頭にあったのは、日本の4年生大学の編入システムだ。必要であれば低学年の単位を取ったりしながらいけばいいんだなと、至極安易に考えていた。(そして、後にこれはとんでもない間違いだったと判明する。)書類には、志望動機はもちろん、旅行経験を書く欄まである。そういえば、何かの本で「世界を旅していない人は建築家になれない」とか言ってた人がいたっけ。仕事で訪れた都市の名を順に書き出して行った。8月末、サマースクールのチューター達が紹介状を学校に別送したと連絡があった。励ましの言葉が添えられていて、胸が熱くなる。
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