新学期、何といっても大変なのがユニット分けだ。AAの良いところは、ユニットの多彩さにあると言っても過言ではない。そのスペクトラムの豊かさがそのまま学校の豊かさなのだが、学生はその中のひとつに所属して一年を通じて作品を作り続けるわけなので、このユニット選びはかなりのストレスだ。学年の初めに、各ユニットマスター達が一年のプロジェクトの概要や抱負をプレゼンテーションし、学生がそれをもとに希望を出す。教官は学生を面接し、ポートフォリオをレビューして「弟子入り」を認められれば決まり。評判のよいユニットは当然競争率も高く、優秀な学生が残る。だから学生も教官も、このユニット分けのプロセスには神経とエネルギーを使ってへとへとになる。 私はユニット紹介のプレゼンテーションを聞いた後、悩みに悩んだ。当然である。プロジェクトが面白そうとか、ユニットのチューターがいい人らしいとか、自分の感想やらゴシップやらが入り乱れて大変なことだ。それでも、最終的には話してみて「ピンと来た」チューターのところを選んだ。私は第一志望のユニットにすんなりと決まったが、学生によっては第一希望、第二希望のユニットにも入れないことがあったりして中々大変である。実力のみならず、ネットワークも運も大切な要素で、ここらへんからAAの厳しさがジワジワと迫ってくるのだ。
AAには入れ替わり立ち代り有名建築家達がやってきて講演会が開かれる。注目の若手から大物までさまざまだが、混雑が予想される講演には、あらかじめ入場券が配られる。券を持っている人だけがレクチャールームで生の講演を見られるというわけだ。これに漏れると、中継の映像を食堂で見たり、後からビデオを観たりということになる。 人気建築家の入場券配布当日には朝から行列ができる。その列が長かったのが、なんと言ってもレム・コールハース(Rem Koolhaas)氏の整理券が配られた朝だった。配布予定時間の30分前には、もう狭い学校中行列の人々でごった返していた。廊下で座り込んで待っている学生の横を、「なんだ、これは、レム行列か?君ら、こんなことに時間を使うくらいなら、家に帰ってドローイングのひとつでもした方がタメになるぞ」などと厭味を言いながら通り過ぎる先生もいて笑えた。私も生レムが見たくて早起きして並んだ一人だ。前に「レムは私の建築アイドル(偶像)なんだ」と告白すると、私のチューター達は「アイドルだってぇ〜?」と爆笑していたが、本当だから仕方がない! 昨年度、一番感銘をうけたのは、Arupの構造設計家であるセシル・バルモント(Cecil Balmond)氏(の講演だ。この「レムやイトー(トヨオ)のエンジニア」である彼の話を聞こうと、学生のみならず教官たちまでAAのレクチャールームに詰めかけた。彼はシンプルな図解と説明で、最新の構造設計のケースをいとも簡単に聴衆の頭のなかに繰り広げてゆく。その発想の素晴らしさもさることながら、このスター・エンジニアの、他人に理解させるコミュニケーション力には本当に驚愕させられた。この人は今、私の「生き神様」である。