数年前、NHKの番組でオランダ アムステルダムのタウンハウスが紹介された。運河沿いに一戸毎にそれぞれの建築家が設計したRow
house(長屋)が並び、内部は中庭があったり、互いに有機的なつながりを持った魅力的なものであった。以来、いつかこの新しい形態の住宅を訪ねてみたいと思っていた。
今年10月、友人の建築家がヨーロッパに1ヶ月ほど行くことになり、旅程最後の9日をご一緒させていただき実現することになった。オランダは今、リートフェルト以降の沈黙の時代を経て、デザインの国ならではのSuper-Dutch(スーパー・ダッチ)と呼ばれる新しい建築の潮流が起こっている。今回はその一端と、長年行ってみたかったベネチアを訪れる旅となった。 |
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| アーティスティックなベネチアの街角 |
イギリスから来る友人とは、アムステルダム スキポール空港で待ち合わせ、ミラノに飛んだ。夜に着き、次の日は午前中ドゥーモ、ギャレリア辺りを散策後、列車でベネチアに向かった。ベローナなどの街をのんびりと通り過ぎ、本土からの長い橋を渡って3時間後サンタルチア駅に到着。そこからは全く自動車の通らない街。
乗り合いバス代わりのバポレット(水上バス)でグランキャナルを通ってサンマルコ広場近くのホテルへ。憧れていた風景にウキウキしながら船に乗って着いたのは、ホテルからは運河3本離れた停泊所で、ドゥカーレ宮を横目で見ながらスーツケースを引っ張って太鼓橋を3つ越えてようやくホテルにたどり着いた。
2日間、目くるめくベネチアを満喫した後、マルコポーロ空港からアムステルダムに戻った。ベネチアでのスーツケースをめぐる難行苦行の経験から、ホテルへは駅前からタクシーで向かった。25年ぶりの運河の美しい都市景観にうっとりしていると、後ろからポリスが追いかけてくる。何事かと思ったら、運転中の携帯電話が違反らしい。いろいろ言い訳をする運転手を横に、白バイに乗った美しい婦人警官が私たちに「どうでしたか?」と証言を求めてくる。「確かに!」と証言後、こんなタクシーに乗ってられるかと降り、仕返しをしてくるかもしれない運転手をおそれ、またスーツケースを引っ張るはめに。タクシーを乗り換え、ようやく元孤児院をリノベーションしたミニマルデザインのホテルアレーナに到着したのであった。 |
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オランダは自転車の国、「マックバイク」という貸し自転車屋があり、そこで「アーキテクチュラルマップ」を手に入れた。TVで観たタウンハウスも「ボルネオ島」にあるらしいという程度でどこにあるのか、何種類かの地図を眺めて行って見ると、たまたまホテルから市電のようなトラムで15分ほど行ったところにあった。東港地区と呼ばれ、倉庫等の立ち並んでいた港湾地域を再開発し集合住宅が建てられている。
ボルネオ、スポーレンブルグという2つの、アメリカ行きに使われていた埠頭が運河を挟んであり、運河に沿って現代版カナルハウス(運河ハウス)が建っている。この運河には赤く塗られた、自転車と歩行者専用の美しいデザインの2本の橋が架かっていて、白鳥や様々な水鳥が遊んでいる。目指すタウンハウスは設計条件として玄関は通り側に作る、運河に対して開放的であることとされており、対岸から開け放たれたインテリアが見える。各戸の外観デザインは間口とスカイラインが決められているだけで、それぞれが個性を競っている。そのデザインよりもすばらしいのは、各戸が運河にボートを係留していて、水辺の暮らしを楽しんでいるライフスタイルと、それを可能にしている都市空間とランドスケープデザインの見事さであった。 |
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アムステルダム東湾地区の運河にかかる
歩行者専用の美しい歩道橋 |
東湾地区スポーレンブルグの運河沿いに、
個性豊かなタウンハウスが建ち並ぶ |
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| 近くにはエリック・ファン・エヘラート設計の「The Whale」と呼ばれる巨大な集合住宅や、移民用の宿泊所などに使われていた建物をリノベーションした、今をときめく設計集団MVRDVがデザインした「ロイドホテル」がある。こう言った話題の建物だけでなく、公団住宅のようなタウンハウスも魅力的なエントランス廻りや中庭などを持ち、集合住宅の歴史の蓄積が違うのか、デザインの質が非常に高いように感じられた。ロイドホテルやホテルアレーナのレストランは、インテリアデザインだけでなくお料理もおしゃれでとても美味であった。 |
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| 100戸の老人のための集合住宅 |
次の日、アムステルダムから列車で40分のところにあるユトレヒトに行った。目指すはリートフェルト設計の「シュレーダー邸」。駅からはバスで20分ほど。電話予約をしておくと内部を1時間位かけてゆっくりと説明くれる。予想以上に内部空間の連続感と周辺を意識した開口部の構成が素晴らしい。日本的な間仕切りも思っていたよりスムースに開閉でき、細部までハイセンスな日常的配慮が行き届き、これなら夫人も満足して暮らしていたのではと思われた。
アムステルダム郊外の、プラタナスの大木に囲まれた美しい小川のほとりに建つMVRDVの「100戸の老人のための集合住宅」や、ユトレヒト大学の前衛的ないくつかの建築など、まだまだお伝えしたいものがあるがまたの機会に。 |
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