| 今私は、イスラム建築の中でも最も有名なモスクの一つ、イスタンブールにある“ブルーモスク”を眺めながら、この文章を書き出しています。私のいる場所は、私がイスタンブールで常宿としている小さなホテルの屋上テラスレストランです。私は、現在52歳。まもなく、この文章を皆さんに読んでいただける頃には、53歳になっていることでしょう。 |
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テラスから見えるブルーモスク
(左:初秋の昼さがり、上:夜)
ブルーモスクは、イスラムのモスクの中でも最高であるため、6本のミナレット(※1)をもっている。 |
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| さて、私はこれまで、一般の人達に比べれば、建築家として当然のこととは言え、世界中の数多くの建築物を訪ね回りました。特に海外の建築との出会いに限れば、今からちょうど30年前のインド・ネパール旅行での、“タージマハール”との出会いが、私の感動した建築探訪の始まりでした。
白亜の大理石で作り上げられた“タージマハール”は、その圧倒的な立体感と優美な存在感で、それまでの私の建築観を大きく変えるものでした。それは、当時の王が自分より先に亡くなった、愛する王妃のため、財力の限りを尽くし作り上げたもので、純白の大理石でできた彫刻的な外観は清純な美しさと迫力を周囲に放っていました。それは一人の人間が抱くことのできる最大の「愛の大きさ」「情念の深さ」を建築(廟)という姿に結実させ、後世に伝える世界最大のモニュメントの一つと言えるものでした。
それを目の前にした時の感動は、私に、建築・インテリアをはじめ、人間が思い入れ・こだわり・情熱をもって時間をかけ作り上げた“もの”には、それを見た人、それを体験した人々に、必ずや何かしらの感動を与えるパワーを生み出すことを教えるものでした。 |
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| さて、今私の目の前に崇高で安定感をもって存在する“ブルーモスク”も、やはり多くの人々の“神への愛・尊敬・憧れ”を結集させ作り上げた世界有数のモニュメントでしょう。その姿は今なお、見る者・訪れる者すべてに感動を与える偉大なパワーをもっています。年に4回以上この建物を眺める機会をもつムスリム(イスラム教を信じる人)でない私にも、今なお毎回、新鮮な感動を与え続けています。
また、この“ブルーモスク”には、春夏秋冬、その時々異なった感情・状況をもつ人々が引っ切り無しに訪れています。それにもかかわらず、ここには、その訪れたすべての人々に神アラーの存在を身近に実感させる空気がただよっているのです。その崇高な外観は神アラーの偉大さを、またその内部空間は、俗社会で汚れてしまった人々の身を優しく清める神アラーの寛大さを感じさせる安堵の空間となっています。
まさしく“ブルーモスク”は、神アラーへの多くの人々の信仰心・情熱が結集し作り上げられた“もの”なのです。 |
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| ホテルの部屋から見える冬のブルーモスク |
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| モスクの前庭から仰ぐ夏のブルーモスク |
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| 大切なコーランの一節は、すべてブルーグリーンのタイルに金色のアラビア文字で描かれている。これがブルーモスクと呼ばれる所以の一つである。 |
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| 美しいシルエットをもつミナレット(尖塔)が天に向かってそびえている。 |
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ところで、これら世界遺産とも呼ばれる建築物は、その当時の選りすぐりの優れた建築家・芸術家・プロデューサーの手によるものであるため、人々に感動を与えるパワーが盛り込まれているのは当然のように思えます。しかし、本来、人間一人一人がその全力を傾け時間をかけ作り上げた“もの”には、それがどんなに些細なものであっても、それに接する人々に何かしらの感動を与えるパワーが込められるものと、私は確信しています。
つまり、私たちが現在かかわって作り上げる小さな住宅においても、お施主さんの情熱、建築家・インテリアコーディネーターの良識と誠意、施工者の献身的な労働が結集できれば、そこにかかわったすべての人達の愛情ゆえに、そこを訪れた人すべてに幸せな感動が引き起こされるものなのです。
小さくともたくさんの感動のある人生はやはり素晴らしいものなのです。
その反対に、何事においても誰かがどこかで手を抜けば、そのもの全体がダメになってしまうはずです。 私を含め、ものを作る人、ものを販売する人にとって、満足ゆく良い仕事を成し遂げることは、気の抜けない大変なことです。
ともに、頑張りましょう!
※1 ミナレット・・・モスクに付属する高い塔。
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| 天蓋には隙間なく金色の文字と模様が描かれている。大切なコーランの一節は、やはりブルーグリーンのタイルに刻まれている。 |
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